科目免除についての考察

えぐちです。

1次試験対策シリーズの最後に、科目免除について書きたいと思います。



大手スクールでは「合格科目はとにかく免除」と助言されます。

それは、受験科目数と1次試験合格率に逆相関があるという内部データを根拠にしています。

確かに受験科目数が少ない方が経営資源が選択・集中できるため、残りの科目だけを受験することで6割確保しやすくなるような気がしますが、以下の理由から、これは適切な判断ではないと考えられます。


⑴科目ごとに平均合格率の変動幅(リスク)が異なる

下図は、平成19年度以降の各科目の科目合格率の推移をグラフにしたものです。

すこしごちゃごちゃしているので整理します。

赤線が1次試験の合格率の推移です。

平均20%前後で安定的に推移していることがわかります。

そして、経済学、企業経営理論、経営法務の3科目の変動幅も比較的小さいことがわかります。

上記と比べると、財務会計、運営管理、経営情報システム、中小企業経営の4科目の変動幅は比較的大きいことがわかります。

上記の通り、各科目の合格率は科目によって変動幅がかなり異なります。

またこの変動幅は、平成26年度以降異なる動きを示しています。

つまり、受験科目によって合格率の変動幅が異なる=科目合格するためのリスクが異なるということです。

例えば、令和元年試験における財務会計の易化や中小企業経営政策の難化や、企業経営理論や経営情報システムの難易度が小幅推移することも想定できました。

自身が受験する科目が難化することが想定されていて(平成30年度の財務会計など)、残り1科目だからという理由だけで他の6科目を免除するという判断は検討材料が十分とはいえません。

令和2年度の財務会計はかなりの難化が想定されますが、今年の難易度を想定して受験した場合、6割確保は厳しいと思います。




⑵科目ごとに合格率(=難易度)が異なる

下図は、平成26年度以降の各科目の合格率と7科目の平均合格率の差をグラフ化したものです。

これも見づらいので整理します。

経済学、運営管理、経営情報システムの3科目は、7科目平均の合格率を超える年が比較的多いことがわかります。

企業経営理論、経営法務の2科目は、7科目平均の合格率を下回る年が多いことがわかります。

特に経営法務は、平成26年度以降、7科目平均の合格率を下回り続けています。

ちなみに経営法務は平成30年度試験で8点もの弾力化調整をしています。

財務会計、中小企業経営政策の2科目は、7科目平均合格率を超えたり下回ったりと、動きが不安定なことがわかります。

上記から科目ごとに「宿命的」に難易度が異なるため、科目合格できる可能性も必然的に異なることがわかります。


⑶100点満点のうち40点は失点してよいという罠

各科目は100点満点で、科目合格は60点以上が条件となります。

つまり、40点は失点してよいということになるわけです。

これを聞くと、「半分ちょいで合格できる」という錯覚に陥りますが、ことはそう甘くはありません。

下記は大手スクールが集計した、各科目の正答率40%未満の問題数と配点をまとめたものです。

正答率が40%未満の問題は、⑴これまで出題実績のない領域からの出題、⑵これまで出題実績のない論点の出題、⑶出題実績があるが対応困難な難問が該当します。

また正答率20%未満の問題は出題者が得点させない意図で出題した「捨て問」と呼ばれる問題です。

科目によるばらつきがありますが、対策困難な「捨て問」が毎年数問出題されていますので、実質的な持ち点は100点満点ではなくなります。

たとえば今年度の財務会計は、全25問のうち得点可能性の高い問題(=正答率が4割以上の問題)は21問になります。

配点は1問あたり4点なので、科目合格には21問中15問、7割以上正解する必要がありました。

同様に、経営法務は正答率40%未満の問題が5問ありますので、科目合格するには現実的には20問で15問、つまり75%正解する必要があります。



もちろん正答率が40%未満の問題も対応できないわけではありませんが、これらの問題は学習負荷(コスト)が高い問題になります(経営法務第20問の債権譲渡の問題や、財務会計第14問のオプションの問題など)。

少なくとも、「100点のうち40点は失点してよい」といった楽観的な考え方が危険であることは理解できると思います。

以上が「合格科目はとにかく免除」という戦略が妥当ではないと考える理由です。

残りの受験科目を「科目数」だけで捉えるのは非常にリスクの高い戦略といえます。



以上の考察から、EBAでは「一律科目免除」を推奨しません。

基本的に、7科目受験が最もリスクが分散されており、対策次第では最も効率的に1次通過できると考えています。

もちろん、何が何でも7科目受験を推奨するものではありません。

EBAでは来年度の1次試験の受験科目についての相談を受け付けています。

受験科目に迷っている方は、一度相談してください。

お問い合わせ、相談はこちらからできます。

https://www.ebatokyo.com/shop/contact



EBAの1次試験対策を体験したい方は、こちらで講義サンプルを視聴できます。



EBA中小企業診断士スクールのブログ更新通知はこちらから受け取ることができます。