本試験はどのように採点しているのか

えぐちです。

再現答案の採点がおわり、今日から順次採点結果をお返ししていきます。

今年は約200名の応募をいただきました。

昨年は100名程度でしたので約2倍です。



採点ペースは1日10時間採点して約100枚でした。

今年の受験生は6,000名とした場合、試験委員はどれくらいのペースで採点しているのかを考えてみました。

試験日の10月20日から合格発表日の12月6日までの日数は47日です。

1週間程度の余裕をもって、採点日数を40日で試算してみると、1日10時間採点した場合のピッチタイムは4分になります。

答案1枚あたりの採点時間が4分です。

診断協会が想定している採点枚数4600枚で試算すると5分になります。

今年は例年よりも持ち時間が1分少ないことになります。

えぐちは、試験委員は各事例作問担当者1名(+お弟子さん1~2名が補助)で採点していると考えています。

「文字(と数字)」だけで採点する2次筆記試験における応用能力の評価は、設問設計や与件設計を仕込んだ作問者本人にしかできないと考えるからです。

1.キーワード採点について

えぐちはワードで起こした「活字」再現答案を採点していますが、試験委員は実際の字を採点します。

字のきれいさや文章の読みやすさが採点に影響しないと考えるのは無理があると思います。

また加点する、しないの判断をする際の表現も重要だと思います。

例えば、今年の事例Ⅲの第1問の強みの問題では、C社の強みは

①熱処理専業企業として培った温度管理などの特殊な技術

②熱処理部門に加えて設計部門と機械加工部門を保有した垂直統合度の高い生産体制

の2点となります。以下の答案をみなさんはどう加点しますか?

①技術力

②設計部門と機械加工部門を保有していること

①の技術力は、結論として正しいのですが、「どのような技術」かがわかりません。

少なくとも、採点者は「温度管理などの特殊な技術」という解答と「技術」という解答を同等に加点していないと考えます。

また②ですが、C社の強みはたんに熱処理部門と機械加工部門の2つの部門を保有しているからでなく、熱処理の「前工程」となる機械加工部門(およびそのための設計部門)を保有したことにあります。

つまり、C社の強みは「複数部門」の保有ではなく「連続する加工工程」の保有または「垂直統合度の高さ」となります。

このため、採点者は与件根拠の「前工程」という与件キーワードを重視すると考えています。

このキーワードの代替として、「連続する工程」「垂直統合度」「一貫して」といった非与件キーワードが同等の価値を持ち、おそらく同じ得点になります。

上記「前工程」は重要な与件キーワードであり、2次試験において、「キーワード採点」は絶対にあると断言できます。

ただそれは、作問者が「中小企業診断士の応用能力を試すために意図して仕込んだ与件根拠」のみが該当するのであり、「与件根拠コピペ解答」を指しているのではありません。

2.最大の条件について

今年は事例Ⅰの第1問と第5問で「最大の」という制約がつきました。

同様の問題は平成29年第1問と事例Ⅲでは平成28年第3問で出題されています。

いわゆる「複数列挙防止」問題です。

この問題は、解答構成に工夫が必要です。

なぜなら「100字で書ける1つの理由」は存在しないからです。

理由は「〇〇だから。」や「△△である。」といった表現になりますが、これを100字で書くと非常に読みづらくなります。

以下の解答例を読んでください。

【解答例1】

中小メーカーのA社にとってメンテナンス事業はコアテクノロジーが活かせない事業であり、異なる事業分野のノウハウを蓄積できず膨大な数の部品在庫が収益を圧迫するなど、既存事業の経営資源が活用できなかったため。

【解答例2】

A社にとってメンテナンス事業はコアテクノロジーが活かせない事業である。異なる事業分野のノウハウを蓄積できず、膨大な数の部品在庫が収益を圧迫した。既存事業の経営資源が活用できなかったことが理由である。

【解答例3】

既存事業の経営資源が活用できなかったため。中小メーカーのA社にとってメンテナンス事業はコアテクノロジーが活かせない事業であり、異なる事業分野のノウハウを蓄積できず、膨大な数の部品在庫が収益を圧迫した。

【解答例4】

既存事業の経営資源が活用できなかったため。A社にとってのメンテナンス事業はコアテクノロジーが活かせない事業であり、異なる事業分野のノウハウを蓄積できなかった。また膨大な数の部品在庫が収益を圧迫した。

上記の解答はどれも書いている「内容」は同じですが、「書き方」が異なります。

書き方によって読みやすさがずいぶんと違うことがわかると思います。

【解答例4】は「また」という接続詞を入れたことにより、設問制約を無視しているという理由で最悪0点になります。

EBAの解答例は【解答例3】ですが、書き方として【解答例1】や【解答例2】でも加点されていると思います。

EBAが採用した解答例の解答構成は、「結論+その説明」です。

【解答例1】のような構成は設問条件に合致していますが、客観的に読みづらいため採点しにくいため、お勧めしません。

それ以前に、80分という制約条件の下でこのような文章を作成することはかなり困難ではないでしょうか。

今回は内容ではなく「表現や採点者心理」に焦点を当ててみました。

次回以降は、実際の採点結果から今年の2次試験を考察したいと思います。



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