令和元年度2次試験の出題の趣旨の考察(事例Ⅱ)

えぐちです。

今回は、事例Ⅱの出題の趣旨をもとに今年度の2次試験を考察します。

第1問(配点20点)

小型ショッピングモール開業を控えた2019年10月末時点のB社の状況について、SWOT 分析をせよ。各要素について、①~④の解答欄にそれぞれ 40 字以内で説明すること。


【EBA解答例】
①強み
社長の季節感ある表現力や2人の飛躍的に向上した技術と前の勤務先で培った提案力。
②弱み
商店街中心部から離れた店舗立地と、狭い店舗スペースにより人員増員ができない点。
③機会
商店街主催で毎月開催されるイベントと商店街周辺の高級住宅地の40~50代女性の増加。
④脅威
店舗近隣に出店する大手チェーンの低価格ネイルサロンと商店街周辺の自宅サロン。

【出題の趣旨】
B社内外の経営環境を分析する能力を問う問題である。

SWOT分析というポピュラーな理論であり、追加的な情報は不要な問題と考えられます。

第2問(配点30点)

B 社社長は初回来店時に、予約受け付けや確認のために、インスタント・メッセンジャー(インターネットによるメッセージ交換サービス)のアカウント(ユーザー ID)を顧客に尋ねている。インスタント・メッセンジャーでは個別にメッセージを配信できる。このアカウントを用いて、デザインを重視する既存顧客の客単価を高めるためには、個別にどのような情報発信を行うべきか。100 字以内で助言せよ。

【EBA解答例(改変後)】
顧客の爪の成長するサイクルに合わせ、社長の季節感の表現力を活かした季節感あるアート・オプションや、毎月開催されるイベントに合わせてジェルネイルをデザインできる高い技術でデザイン・オプションを案内する。

【EBA解答例(改変前)】
社長の季節感の表現力を活かした季節感あるアート・オプションや、服に合わせてジェルネイルをデザインできる高い技術のデザイン・オプション、社長とYさんの装飾力を活かしたストーン・オプションを案内する。

【出題の趣旨】

B社顧客個々の状況に合わせたコミュニケーション方法を提言する能力を問う問題である。

顧客の個々の状況に合わせたコミュニケーションが求められていたことが明らかになりました。

設問条件となる「客単価を高める」ためにはオプションを提案するという助言は変わりませんが、構成上、B社の活用資源だけでなく、「顧客の個々の状況」に合ったオプション提案が期待されていたと考えられます。

これらの解釈から、第2問に対応する与件根拠として、以下を挙げることができます。

1段落
 X 市では商店街周辺を中核として 15年前にファミリー向け宅地の開発が行われ、その頃に多数の家族が入居した(現在の人口分布は 4 ページの図 1 参照)。当該地域は新興住宅地であるものの、桜祭り、七夕祭り、秋祭り、クリスマス・マーケットなどの町内会、寺社、商店街主催のイベントが毎月あり、行事が盛んな土地柄である。
2段落
 特に在職中から季節感の表現に定評があり、社長が提案した季節限定商品のパッケージや季節催事用の POP は、同社退職後も継続して利用されていた。
6段落
 あるとき、B 社社長が、自分の子供の卒業式で着用した和服に合わせてデザインしたジェルネイルの写真を写真共有アプリ上にアップした。その画像がネット上で話題になり拡散され、技術の高さを評価した周辺住民が来店するようになった。
 ジェルネイルは爪の成長に伴い施術から 3 週間~1 カ月の間隔での来店が必要になる。


「顧客個々の状況」の違いを想定すれば、①ネイルサービスを利用するタイミング、②ライフイベントの時期と内容が異なると考えられます。

このため、B社は顧客ごとのネイルが伸びるタイミングに合わせ、季節ごとに、またライフイベントに合わせてオプションサービスの提案を行うといった施策が有効であると考えられます。

その際に、B社社長がもつ季節感の表現力、B社社長やYさんのもつデザインや装飾力を活かすことができます。

上記を踏まえ、EBA解答例を改変しました。

第3問(配点 50 点)

B 社社長は 2019 年 11 月以降に顧客数が大幅に減少することを予想し、その分を補うために商店街の他業種との協業を模索している。
(設問 1 )
B 社社長は減少するであろう顧客分を補うため、協業を通じた新規顧客のトライアルが必要であると考えている。どのような協業相手と組んで、どのような顧客層を獲得すべきか。理由と併せて 100 字以内で助言せよ。


【EBA解答例】

貸衣装チェーン店を協業相手とし、高級住宅地に住むデザイン重視の40~50代女性を顧客層とする。人口が増加しており、予約会を通じて接触でき、顧客の要望を聞きながら提案するYさんの接客力が協業先にも活かせる。

【出題の趣旨】


B社の状況や目的に応じて、協業相手やターゲットを提言する能力を問う問題である。

「B社の状況」は競合店出店による大幅な既存顧客(自宅からの近さ重視の顧客)の減少です。

B社の既存顧客は自宅からの近さ重視の顧客とデザイン重視の顧客が半々ですが、競合出店により前者の顧客が流出します。

また「B社の目的」は、近さ重視の顧客流出を補う新規顧客の獲得となります。

このため、B社のターゲットは近さ重視ではない、デザイン重視の顧客となります。

協業相手として貸衣装チェーンを選ぶ理由は、Yさんの人的資源が協業先に貢献できるとともに、B社が求める新規顧客層に貸衣装チェーンがリーチしていることが挙げられます。

(設問 2 )
協業を通じて獲得した顧客層をリピートにつなげるために、初回来店時に店内での接客を通じてどのような提案をすべきか。価格プロモーション以外の提案について、理由と併せて 100 字以内で助言せよ。

【EBA解答例】


社長の高い技術力でデザインしたネイル写真を用意し、社長とYさんの提案力でサービス提供前に提案する。言葉で伝えるのが難しい顧客にサービスを可視化し、顧客の要望にあったデザイン提供を通じて高評価が得られる。

【出題の趣旨】


B社の強みを活かし、新規顧客との長期的関係性を築く施策を提言する能力を問う問題である。

「B社の強みを活かし」と明示されたことから、解答構成上、B社の活用資源の指摘が期待されていることがわかります。

EBAでは「社長の高い技術力」「社長とYさんの提案力」を活用資源として指摘しています。


また「長期的関係性を築く施策」とありますが、「初回来店時に店内での接客を通じて」という条件があるため、顧客生涯価値を意図した問題ではなく、初回利用の顧客を満足させることで再来店を獲得するための施策が期待されていたと解釈できます。

この問題については27日に発売された「企業診断1月号」の特集で詳細に解説していますので、興味がある方はお読みください。

https://www.doyukan.co.jp/store/item_2020011.html






*****

EBA中小企業診断士スクール2020年度対策無料ガイダンスのご案内

次回は下記日時で開催いたします!
事前の申込不要、参加無料ですのでお気軽にお越しください。

今年の2次筆記試験の合格者も参加してくれますので、試験までの学習方法等、気軽にご質問ください。

2020年1月11日(土)13:00~15:30
受付は12:30より開始いたします。
終了後、16:00までは講師やスタッフ、合格者の方へ受講相談やご質問をしていただけます。

場所:フクラシア東京ステーション6階
   場所詳細はこちら

内容:2020年度試験に向けたEBAスクールの対策/カリキュラムや学習方法のご案内/EBA中小企業診断士スクールの実務支援プロジェクトについて/合格者の声

終了後、自由に質問や受講相談をしていただけます。
また、テキストや演習等のサンプルも置いておりますのでご自由にご覧いただけます。
ぜひ、お越しください!

*****

EBA中小企業診断士スクールのブログの更新通知を受け取るにはこちらから登録をしてください。