6,000枚を採点した令和元年度試験の設問・与件設計と今年の2次試験

えぐちです。少しずつ過ごしやすくなってきましたね。

2次試験まであと40日を切りました。申し込みは18日(金)までなので忘れず手続きしてください。

https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/010_c_r02_shiken/R02_2ji_shiken_about.html



本日、2次最終チェック講義の申し込みを開始しました。

今年は2次受験資格者が7,000人います。

15%程度が受験延期すると推測できますので、約6,000人が受験すると推定できます。

6,000人は昨年と同程度です。

協会が公表する採点事務の想定人数である4,600人を「例年」と捉えれば去年も今年も例外になりますが、数字でみれば、今年の2次試験は「例年にない激戦」ということにはなりません。

すでに6,000枚の採点実績があるので、協会側は「想定内」と考えています。

少なくとも、「今年は超激戦なので差別化しないと合格できない」などとは考えない方がいいと思います。

6,000枚の採点をした昨年の2次試験について、おととしと比較した相違点として「設問解釈の難しさ」を挙げることができます。

以下、事例Ⅰ~Ⅲについて具体的に説明します。

◆事例Ⅰ

「その背景」など、解釈しづらい設問にすることで、理論の発揮前の「問われ方への答え方」を難しくした(第1問、第2問、第3問、第5問)

第1問「それが結果的にビジネスとして成功しなかった最大の理由」

第2問「改革に取り組むことになった高コスト体質の要因は、古い営業体質にあった。その背景にある A 社の企業風土とは、どのようなものであるか。」

第3問「その成功の背景にどのような要因があったか」

第5問「組織再編を経営コンサルタントの助言を熟考した上で見送ることとした。その最大の理由として、どのようなことが考えられるか」

この設計を採用することで出題者が意図してない与件根拠を使った解答を作成しやすくなり、得点しにくくなります。

◆事例Ⅱ

第3問(設問2)は「初回来店客」向けの「店内接客」を条件とした問題ですが、「初回」来店への意識が弱い解答「接客」への意識が弱い解答が散見されました。

設問条件を外せばその部分は加点されないため、差がつきやすくなります。

◆事例Ⅲ

第3問(設問1)および(設問2)

「新工場の在り方(設問1)」「どのような検討(設問2)」から、課題を記述させるのか課題を達成するために助言をさせるのかが読み取りにくい設問設計となっています(出題の趣旨により「助言」が期待されていたことが明らかになりました)。

事例Ⅲでは設問設計だけでなく、与件設計でも難易度が高くなっています。

①問題点の根拠を埋めない

平成30年度では与件に「過大な製品在庫」、平成29年度では「担当している機械の他は操作ができない」など、各解答のゴール(テーマ)を識別しやすくするための与件根拠が埋め込まれていますが、令和元年度ではそのような根拠はありません。

②課題らしき根拠をたくさん埋め込む

①とは逆に、与件に課題と思われる根拠をたくさん埋め込むことで、対応すべき与件根拠を選択しにくくしています。

1.X社の受託生産部品だけの生産をする専用機化・専用ライン化にするのではなく、将来的にはX社向け自動車部品以外の量産の機械加工ができる新工場にする。

2.これまでの作業者のスキルに頼った加工品質の維持ではなく、作業標準化を進める。

3.一人当たり生産性を極限まで高めるよう作業設計、工程レイアウト設計などの工程計画を進め、最適な新規設備の選定を行う。

4.近年の人材採用難に対応して、新工場要員の採用は最小限にとどめ、作業方法の教育を実施し、早期の工場稼働を目指す。

このような与件設計により、受験生はどの与件根拠を各設問に対応付けてよいのかを特定できず、解答編集に苦慮します。

これにより「与件コピペ」解答自体を難しくすることができます。

逆に、後工程引取方式から平準化生産や生産リードタイム短縮、前提としての作業改善を理論想定できる受験生は、各設問に対応したゴールを適切に紐づけて解答作成できます。

以上のことから、出題者は問い方や根拠の埋め方を変えることで難易度を調整していると考えられます。

今年の2次試験もこれと同様の設計を採用すると考えて対策する必要があります。

最終チェック講義では、主に以下のテーマを扱います。

⑴今年の試験で問われる論点の整理

論点とは出題テーマのことです。

たとえば事例Ⅲではここ数年続けて「垂直統合度」の高さをC社の強みとし、これを戦略問題で「高付加価値受注」に繋げる戦略を記述させる問題が出題されています。

垂直統合については、平成22年までは事例Ⅰで取り扱うテーマでしたが、平成23年以降は事例Ⅰでは問われていません。

また出題業種によって問われるテーマも変わります。

例えば事例Ⅲでは平成24年、平成28年で食品加工業が出題されていますが、食品加工業でも平成24年のような保存の利く製品を扱う場合と、平成28年のように保存が利かない製品を扱う場合では生産管理のテーマは異なります。

後者なら昨年のようなジャストインタイムな生産は困難です。

また事例Ⅱが製造業の場合は必ずブランド問題が出題されるなど、出題業種によって出題テーマは変わります。

⑵今年の試験で問われる理論の整理

上記とも関係しますが、出題者がどの理論に基づいて出題しているかを知ることは、題意をとらえた解答を作成するために重要です。

例えば難問と言われた平成27年の事例Ⅲでは、機械加工工程で「多台持ち」していますが、多台持ちすると仕掛品が滞留しやすくなります。

受験生の多くは「多工程持ちと多台持ち」の区別ができません。

平準化生産に多工程持ちは必須ですが、多台持ちと書いたら0点です(意味わかりますよね)。

毎年出題される生産管理の問題ですが、平成27年のような設問になった場合、多くの受験生は与件根拠の対応付けで混乱すると思います。

今年は昨年並みの受験者数が想定されますので、昨年同様、設問設計や与件設計で難易度を調整してくる可能性が高くなります。

そのため、確かな理論に基づく与件の対応付けが得点を安定させるために有効となります。

今年の2次試験でどんな問題が出ても、落ち着いて処理ができるように備えましょう

https://www.ebatokyo.com/news/3261