【2次】得点開示データの分析(事例Ⅰ)

令和2年度の2次筆記試験について、再現答案を提出いただいた方の協会得点開示結果のデータを分析しました。

データ分析により明らかになったことをいくつか紹介したいと思います。


1.解答要素における理論/与件の使用数の比較

得点開示データのうち、50点以上となった解答(48名)を使用して、解答要素の特徴を分析しました。

ここでは、解答要素を⑴与件根拠と⑵理論に分解して、各解答で与件/理論をどの程度解答に使用したのかを調べました。

下図はその結果です。

横軸は開示得点、縦軸は要素数です。

高得点者とB評価(50点台)を比較した場合、少しですが高得点者の方が与件根拠の要素数が多いことがわかります。

同様に、高得点者とB評価者を比較すると、明らかに理論要素の使用数が異なることがわかります。

もう少しわかりやすくするために、開示得点を層別にまとめてみました。

グラフから、高得点者とB評価者では、理論要素の使用数に明確な差があることがわかります。

参考までに、第1問の再現答案の与件/理論は以下の通りです。

特に「相乗効果」「多角化」といった理論の使用で差がついていることがわかります。

高得点者ほどこれらの理論を使用していることから、出題者が意図した解答である(つまり高配点で加点されている)ことが推測できます。

サンプル数は十分とは言えませんが、出題者が期待した理論を使用した解答や、それを説明する際に効果的な与件根拠が加点されている可能性は高いと考えられます。


2.仮説:高得点者は理論を活かして与件を引き上げている

もう少し深く分析してみます。

上記の第1問の解答要素を見てみましょう。

「相乗効果」と「高級旅館や飲食店との関係」において、高得点者とB評価者で使用率が異なることがわかります。

まず、「高級旅館や飲食店」の与件根拠や理論「相乗効果」は、高得点者が使用し、B評価者の使用割合が低いことから、本試験で加点されている可能性が高いと考えられます。

48名の答案のうち「高級旅館や飲食店の関係」を記述した解答は22名、「相乗効果」を記述した解答は28名でした。

そのうち「相乗効果」を記述した答案が20名(91%)となっています。

同様に、「相乗効果」を記述した解答28名のうち、「相乗効果」と「高級旅館や飲食店の関係」を共に記述した解答は20名(71%)でした(「高級旅館や飲食店の関係」を記述した解答の割合で割ると1.56倍)。

上記より、「相乗効果」を記述した場合、「高級旅館や飲食店の関係」も記述できた可能性が高いと考えることができます。

これは、解答で「相乗効果」を記述する際、単独で「相乗効果」と記述するよりも、「高級旅館や飲食店との相乗効果」と解答した方が説得力が高く、より出題者の意図をとらえた解答を作成しやすくなるためだと言えます。

結果的に、この理論を使用した解答は、与件根拠も使用することができ、高得点を得ていると考えられます。

特に事例Ⅰにおいて、与件根拠と理論を使用した解答が高得点になる傾向がありますが、高得点者は、設問解釈時点で、出題者が期待する理論を想定することで、加点可能性の高い与件根拠を使用する機会を高めることに成功しているのではないかと思われます。

オプション講義では得点開示データ分析を共有したうえで、加点機会を高めるための理論の活かし方を解説しています。

興味がある方はぜひ視聴してください。

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