出題の趣旨を踏まえた令和5年度の事例Ⅳ

第1問(配点20点)

(設問1)

 D社の2期間の財務諸表を用いて経営分析を行い、令和3年度と比較して悪化したと考えられる財務指標を2つ(①②)、改善したと考えられる財務指標を1つ(③)取り上げ、それぞれについて、名称を⒜欄に、令和4年度の財務指標の値を⒝欄に記入せよ。解答に当たっては、⒝欄の値は小数点第3位を四捨五入して、小数点第2位まで表示すること。また、⒝欄のカッコ内に単位を明記すること。

【出題の趣旨】
 D社の財務諸表を用いて、診断及び助言の基礎となる財務指標を算出する能力を問う問題である。

特に追加的な情報は得られませんでした。


(設問2)

 設問1で解答した悪化したと考えられる2つの財務指標のうちの1つを取り上げ、悪化した原因を80字以内で述べよ。

【出題の趣旨】
 設問1で算出した財務指標をもとに、D社の財務的問題点とその要因を分析する能力を問う問題である。

特に追加的な情報は得られませんでした。


第2問(配点30点)

(設問1)

割愛

(設問2)

割愛

(設問3)

 D社では、売上高を基準に共通費を製品別に配賦している。この会計処理の妥当性について、あなたの考えを80字以内で述べよ。

【出題の趣旨】
 共通費の配賦を売上高で行う場合の会計情報の有用性について、的確な理解を問う問題である。

「会計処理の妥当性」が「会計情報の有用性」という表現に改められました。会計情報の有用性を説明する性質のひとつに、目的整合性というものがあります。

目的適合性
「会計情報が、投資者、債権者その他の情報利用者の投資、与信およびこれに類似する意思決定にとって適合するためには、当該会計情報が情報利用者に過去、現在および将来の事象の成果の予測または事前の期待値の確認もしくは訂正を行わせることによって情報利用者の意思決定に影響を及ぼしうるものでなければならない」

(現代社会文化研究No.30 2004年7月 会計情報の有用性―有用性の意義とそれへの批判―岩浪貞芳より引用)

こむつかしく感じますが、ようは「継続的なデータに修正を加えることで意思決定に役立つ性質をもつ」ということです。その意味では、「売上高」で各製品に固定費を配賦する方法で、各製品の収益性を適切に評価することは難しいと考えられます。

https://www.youtube.com/watch?v=suMKrN9ISjI&t=6337s 5:05:52 以降を参照してください。


第3問(配点30点)

(設問1)

割愛

(設問2)

割愛

第4問(配点20点)

(設問1)

 D社は、基礎化粧品などの企画・開発・販売に特化しており、OEM生産によって委託先に製品の生産を委託している。OEM生産の財務的利点について50字以内で述べよ。

【出題の趣旨】
 OEM生産の財務的特性について問う問題である。

財務的「利点」が財務的「特性」に変換されました(必要ある?)。特性だと「そのものだけが持つ性質。特有のすぐれた性質。」という意味になりますので、利点のなかでもすげーやつ的な解釈になりますが、素直にメリットが期待されていたと考えてよいと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=suMKrN9ISjI&t=6337s 5:08:53 以降を参照してください。


(設問2)

 D社が新たな製品分野として男性向けアンチエイジング製品を開発し販売することは、財務的にどのような利点があるかについて50字以内で述べよ。

【出題の趣旨】
 D社について、新たな製品分野に進出する財務的利点について問う問題である。

こんどは財務的「利点」がそのまま残りました。ここまでこだわるからには、(設問1)はただの利点だけではダメな気もしてきます…

「新たな製品分野として男性向けアンチエイジング製品を開発し販売する」という具体的な記述が「新たな製品分野に進出する」と短くなりました。この省略に意味があるとすれば、事業の具体的な内容でなく、複数事業展開する、もしくは異なる事業分野に進出すること自体の財務的利点が問われていたと解釈できます。

財務的利点という制約から、「範囲の経済」を意図していたと考えられ、研究開発投資や人件費投資の財務負担が軽減されることを期待していたと考えられます。

https://www.youtube.com/watch?v=suMKrN9ISjI&t=6337s 5:11:29 以降を参照してください。


以上となります。

出題の趣旨では問題によってはかなり具体的な追加情報が与えられるため、出題者の意図を正しく解釈するための助けになります。題意を正しく読み取ることで、加点可能性が低い根拠を対応づけする無駄やリスクを排除することができます。特に、令和5年では事例Ⅰの第3問、事例Ⅱの第4問、事例Ⅲの第3問と第4問で具体的な情報が追加されました。これらの問題が評価の差に大きく影響していたと考えることができます。

 昨年の2次試験で悔しい経験をされた方は、「題意を正しく読み取る力」を鍛えることで、格段に得点力が向上することを理解し、今年、必ず良い結果を残しましょう。