こんにちは。
EBA中小企業診断士スクールです。
EBAの1次対策のご紹介、今回は③「2次を意識した1次の学習」について 前回に引き続き、具体例を示しながら見ていこうと思います。
今回は「顧客生涯価値」についてです。
「顧客生涯価値」は過去に、運営管理で出題があります。
まず、過去問を見てみましょう。
平成27年度 第29問
小売業の販売方法に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
ア 慣習価格を崩さずに商品の容量を減らすことは、顧客生涯価値を高めるのに役立つ。
イ クーポンを発行して、レジで商品の価格を割り引いて販売することは、単なる値引きと比べて消費者の内的参照価格の低下を防ぐのに役立つ。
ウ シー ズン性のある商品をそのシーズンの終わりに価格を割り引いて販売することは、商品在庫の削減に役立つ。
エ 商品の価格を変更せずに容量を増やして販売することは、割安感を演出するのに役立つ。
オ 値引き後の販売価格と値引き前の通常販売価格を二重価格表示することは、割安感を演出するのに役立つ。
選択肢アに「顧客生涯価値」が出てますね。
ちなみにこの問題では、選択肢アが不適切な選択肢です。
何が違うのでしょうか?
ちょっと考えてみてください。
まず、顧客生涯価値について見てみましょう。
顧客生涯価値とは、ある一人の顧客に生涯にわたって企業が提供した価値の合計のことを言います。
これを高めるためには、
①購入金額
②購入頻度
③購入期間
この3つの要素が増加(③は長期化)することが条件となります。
これを踏まえて先ほどの選択肢を判断してみると
ア 慣習価格を崩さずに商品の容量を減らすことは、顧客生涯価値を高めるのに役立つ。
商品の容量を減らすことは、先ほどの①②③と関連がないので 顧客生涯価値を高めることには繋がりません。
さて、これを踏まえて今度は2次試験の問題を見てみましょう!
平成29年度試験 事例Ⅱより
第3問(配点30点)
地域内の中小建設業と連携しながら、シルバー世代の顧客生涯価値を高めるための施策について、120字以内で助言せよ。
前回同様、与件本文の情報をざっくりとまとめておきます。
・B社の品揃えは、布団、ベッド、マットレス、ベビー布団、ベビーベッド、介護ベッド、布団カバー、枕、パジャマなど
・B社は丁寧な接客が強みだが、それにより生じる待ち時間で顧客が帰ってしまわないように店舗の一角に椅子とテーブルを置き、無料で飲み物を提供する休憩コーナーを設置
・B社副社長(B社社長の奥さん)が休憩コーナーで井戸端会議を始めた・井戸端会議メンバーでよく集まり、交流を深めたり、ニーズ収集をしたりしている
・B社ではこだわりの日用品も販売していて、井戸端会議メンバーが購入し、リピートする例も多い
・寝具は購買間隔が長く、顧客との接点が切れやすいが、日用品は購買間隔が短いので、B社が顧客との継続的な接点を作りやすくなった
・井戸端会議メンバーの世代のことを与件本文では、シルバー世代と呼んでいる
B社の問題設定上、説明しないと分からない要素がいくつかあったので 情報量が多めですが、上記の情報をもとに考えてみましょう。
先ほど確認したように、顧客生涯価値は①購入金額②購入頻度③購入期間の増加(長期化)で高めることができます。
1つずつ見ていきましょう。
まず、今回のターゲットは「シルバー世代」です。
名前からも分かる通り、ご年配の世代であることはなんとなく想定できるでしょう。
また、B社社長は70歳近いと与件本文に書いてあります。
その奥さんである副社長も、井戸端会議メンバーも、B社社長と同世代と想定すると シルバー世代は70歳くらいの年代だと思われます。
シルバー世代をターゲットに、③購入期間の長期化は可能でしょうか?
近年では医療が発達して・・・ということも考えられなくないですが、 それはB社のチカラではないので事例問題ではそんなことは考えません。
そうすると、③購入期間の長期化はあまり現実的ではないですよね。
となると、可能性が残るのは、①購入金額の増加、②購入頻度の増加になります。
これらをもとに考えていくと
中小建設業と連携
↓
中小建設業の顧客に介護ベッドを薦める
・B社は新規顧客ゲット!
・中小建設業は、他の建設業との差別化が図れる!
↓
B社はその顧客に日用品を訪問販売
↓
顧客との接点ができる
(寝具は購買間隔が長く、顧客との接点が切れやすいが、日用品は購買間隔が短いので、B社が顧客との継続的な接点を作りやすくなったと与件にそのまま書いています!)
↓
布団などの関連商品需要や介護ベッドの買換え需要を獲得
という流れで考えることができます。
これにより、顧客生涯価値が高めることができます。
EBAの解答例は以下のようになります。
【EBA解答例】
中小建設業の介護用の改装に合わせ、睡眠状況を聞きながら介護ベッドを薦めることで新規顧客を獲得し、中小建設業の差別化に貢献する。こだわりの日用品を訪問販売して顧客との継続的接点を作り、布団などの関連商品需要や介護ベッドの買換え需要を獲得する。
顧客生涯価値の理論が分かっていないとこの解答にたどり着けませんよね。
このように、2次でも1次の知識は問われます。
これを2次試験対策として学習するよりも、1次対策+2次対策で学習するほうが効率的ですよね。
しかも、1次試験で問われた問題が2次試験で問われています。
「2次を意識した1次の学習」の重要性について分かっていただけましたか?
次回は残りの「市場ポジショニング」、「人材のダイバーシティ」の2つについてご紹介します。
また、今年度の2次試験を受験される方向けに 近日中に、「今年の2次に出る1次理論」のご紹介を近日中に更新予定です。
お楽しみに!!