江口です。
今日は、みなさんが苦手な事例Ⅲの理論について紹介します。まず、以下の設問をご覧ください。
平成29年度第1問(配点30点)
CNC木工加工機の生産販売を進めるために検討すべき生産管理上の課題とその対応策を140字以内で述べよ。
平成28年度第2問(配点30点)
現在C社が抱えている最大の経営課題は、収益改善を早急に図ることである。生産管理面での対応策を160字以内で述べよ。
平成27年度第3問(配点20点)
C社は、納期遅延の解消を目的に生産管理のIT化を計画している。それには、どのように納期管理をし、その際、どのような情報を活用していくべきか、120字以内で述べよ。
平成26年度第3問(配点40点)
C社では、主要取引先X社精密部品事業部の国内部品調達および物流の合理化計画に対応するための対策が検討されている。この課題について、以下の設問に答えよ。
(設問2)
X社からの業務の移管に対応するためには、C社の生産計画や資材調達計画を今後どのように改革していくことが必要となるか、160字以内で述べよ。
事例Ⅲでは「生産管理」という用語がよく出てきます。皆さん当然ご存知の通り、生産管理とは①生産計画と②生産統制のことです。
では、今年から試験委員に選ばれた事例Ⅲの担当者の頭の中に、「生産」とはどのようなイメージがあるのでしょうか。今日は、木内先生の考える「生産」について考察します。
木内先生は、生産を①生産現場と②生産管理に分類して定義し、①生産現場をさらにIEとQCに分類して説明しています。ここではおもに「標準化」を目的とします。
そして②生産管理は、JISの定義どおりで①生産計画と②生産統制の2つに分類していますが、とくに①生産現場と②生産管理の連動性強化が重要であると指摘しています。
それでは①生産現場と②生産管理の連動性とは一体何のことでしょうか。
この連動性において重要となるキーワードが「標準化」です。
これについて説明する前に、まず生産管理についてもう少し説明していきます。
このブログを読んでいる方は、生産管理、つまり①生産計画と②生産統制の構成を説明できますよね。
できないなんて情けないことは言わないでください。
①生産計画は非常に多くの分類がありますが、木内先生によれば、(1)日程計画と(2)工数計画の2つに分類されます。
(1)日程計画
工場内の製造リードタイムを見積もり、納期を設定し、その納期を遵守するために生産の時期と量を決定する。
(2 )工数計画
仕事量である負荷と工場内の能力を工数に換算し、負荷と能力の調整を行う。
そして、この生産計画を補正するものが②生産統制であるとしています。生産統制は、
(3)進度管理、(4)余力管理、(5)現品管理から構成され、
(3)進度管理は(1)日程計画に対応し、
(4)余力管理は(2)工数計画に対応する、としています。
この(4)と(2)の関係、覚えがありませんか?
そうです。平成28年度1次試験の運営管理で出題されていましたね。少し紹介しましょう。
平成28年度
第11問
工数計画およびそれに対応した余力管理に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
×ア 各職場・各作業者について手持仕事量と現有生産能力とを調査し、これらを比較対照したうえで手順計画によって再スケジュールをする。 (手持ち仕事量と現有生産能力、つまり余力を調査したうえで対応させるのは「工数計画」となる)
〇イ 工数計画において、仕事量や生産能力を算定するためには、一般的に作業時間や作業量が用いられる。
〇ウ 工数計画において求めた工程別の仕事量と日程計画で計画された納期までに完了する工程別の仕事量とを比較することを並行的に進めていき、生産能力の過不足の状況を把握する。
〇エ 余力がマイナスになった場合に、就業時間の延長、作業員の増員、外注の利用、機械・設備の増強などの対策をとる。
ここでは、みなさんにあまり馴染みのない、生産計画について「事例Ⅲ」の視点で説明していきます。
まず、①生産計画には、その期間により大日程計画、中日程計画、小日程計画に分類されますが、この中で2次試験で重視されるものは中日程計画と小日程計画でしょう。
中日程計画の計画期間は3か月、計画単位は週、計画サイクルは1カ月となります。
1次試験で学んだ通り、計画期間は長ければ長いほど精度が低下しますので、この中日程計画では3か月スパンの計画を作成後、毎月修正して精度を高めることが重要です。
小日程計画は、計画期間は2週間、計画単位は日、計画サイクルは1週間です。飛び込み注文などが多い場合は、小日程計画で修正して対応します。
生産計画面の助言問題で必要な1次理論です。
(2)工数計画
工数計画はこのブログを読んでいる方でもあまり詳しく知らないのではないでしょうか。
しかし、試験委員である木内先生はご自身の著書において生産計画を明示的に2つに分類して説明されていますし、事実上記のように、すでに1次試験では出題されています。
工数計画では、計画された日程で生産を開始して完了することができるかどうかを生産能力の観点で把握します。
細かい調整は(4)余力管理で行うのですが、ここではその元になる計画を作成します。そして、工数計画を作成するために必要なデータが「標準時間」です。
標準時間が短縮されると、負荷が減少します。さて、同じ能力の場合負荷の減少はC社にどのような効果をもたらすでしょうか…?これはオプション参加者限定の秘密です。
(1)日程計画
日程計画では製品ごとに基準日程を決定します。そして基準日程は加工期間と余裕期間で構成され、この加工期間の基準になるものが、やはり「標準時間」なんですね。
そして基準日程における余裕期間とは、加工待ち(他の製品を加工することにより起こる手待ち)と運搬待ち(他職場との関係性による手待ち)に対する余裕期間を指します。
そして、日程計画が作成されることで、生産に必要な資材の発注時期と量が決定されます。この資材の納入日より、資材の調達期間を考慮して資材計画を作成するわけです。
C社の問題として考えた場合、たとえば平成26年度第3問(設問2)のように、資材調達計画がどのタイミングで、どのサイクルで作成されているかは、日程計画に依存することになるわけです。
このように、「C社の生産現場ではいったいどのように業務が進行しているのか」の全体像が見えないと、「どこに課題があるのか」「どこに問題点の原因があるのか」が特定できなくなります。これが、事例Ⅲが難しいと言われる理由です。
上記の通り、「標準時間」が日程計画における基準日程の加工期間に影響し、また工数計画における負荷と能力との関係にも影響していることがわかります。
そして、生産計画作成後の変動への対応は、生産統制で行われます。
いかがでしたか?事例Ⅲでも、事例ⅠやⅡと同様、1次理論がベースになっていることが理解できたことと思います。
EBAでは理論マスター講義でこれらの1次理論はみっちり講義していますが、直前期に今年の理論だけでも、という方は最終オプションで足元を固めてください。
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