えぐちです。
いよいよ明日、2次筆記試験の発表ですね。
10月の試験からあっという間の感じもします。
一人でも多くの方が2次筆記試験を合格されることを祈っています。
さて事例企業の解説シリーズも今日で最後です。
今日はD社の概要を書きました。
口述試験では企業価値の説明はできるようにしておきましょう。
以下、代表的な企業価値の手法を紹介します。
①インカムアプローチ
将来期待される経済的な収益やキャッシュフローを、その実現に見込まれるリスク等を考慮した割引率で割引くことにより評価を行う手法
→DCF法、配当還元法など
②コストアプローチ
会社の保有している資産の価値に着目する手法。
→簿価純資産法、時価純資産法
③マーケットアプローチ
市場において成立する相場の価格をもとに企業価値を算定する手法
→市場株価法、マルチプル法
また、損益分岐点の出題から、営業レバレッジの説明もできるようにしておくとよいですね。
D社は相対的に固定費の低い事業展開をしていますので、営業レバレッジが低い企業です。
これは売上変動の利益への影響が小さいことを意味します。
それでは以下、D社の概要です。
1.概要
D社は資本金5,000万円、従業員55名、売上高約15億円の倉庫・輸送および不動産関連サービス業です。
ハウスメーカーおよび不動産流通会社、並びに不動産管理会社およびマンスリーマンション運営会社のサポートを事業内容としています。
1)D社の財政状態と経営成績における優れている点と課題
D社の自己資本比率は35.59%と同業他社と比べて安全性が高いです。
特に資本剰余金が多く、今年度に吸収合併したことにより増加した株主資本が資本剰余金として増加したことが原因と思われます。
一方で、有形固定資産回転率は同業他社の42.21回と比べて17.08回と低く、今後拡大する予定の自社支店や営業拠点により増加する投資を売上高に結び付ける効率性の改善が課題となります。
また、D社の事業は二人一組で配送するシステムなど労働集約的で、人件費が嵩みます。
このため、効率的に人材を活用することで売上高販売管理費率(22.95%)を改善するなど、収益性を改善することも課題となっています。
2)吸収合併したF社のD社企業価値への貢献
D社は今年度の初めにF社を吸収合併し、インテリアサポート事業のサービスを拡充しました。
この新事業について、吸収合併により増加した資産(190百万円)に対して要求されるキャッシュフローを配当割引モデルにより求めた結果、6.27百万円となりました。
これに対し、吸収合併により増加したキャッシュフローは3.8百万円であり、要求キャッシュフローを下回っていました。
これにより、現時点でのF社の吸収合併は、D社の企業価値の増加には貢献していないことがわかりました。
この増加したキャッシュフローが毎年一定率で成長すると仮定した場合、定率成長モデルによりD社が吸収合併により増加させた資産金額に見合ったキャッシュフローの成長率は1.27%と試算されました。
D社がこの値を上回るキャッシュフローの成長率を実現できれば、D社の吸収合併は企業価値の増加に貢献したと評価できます。
3)営業拠点の拡大とD社の収益への影響
D社は営業拠点として、地方別に3か所の視点または中核となる大都市に開設しています。
広域にビジネスを展開している多くの顧客企業による業務委託の要望に応えるために、D社はこれまでに営業拠点がない地方に営業所を1か所新たに開設することにしました。
人手不足もあり、来年度は外注費が7%上昇することが予想されています。
この前提での来年度の変動費率は73.3%と高いですが、営業利益の予想は76百万円の増加が見込まれます。
D社の営業拠点の増設は投資規模も小さく、相対的に変動費の割合が大きいと言えます。
しかし、同様のタイプの出店を増加させた場合、投資効率の観点から、売上増加は逓減することが想定されるため、投資による利益は低減していくことでD社の成長性は鈍化していくと考えられます。
4)サポート業務の業務委託を行うことのリスクと対策について
D社は受注した業務について、協力個人事業主に業務委託を行うとともに、配送ネットワークに加盟した物流業者に梱包、発送等の業務や顧客への受け渡し、代金回収業務等を委託しており、協力個人事業主などの確保・育成および加盟物流業者との緊密な連携とサービス水準の把握・向上がビジネスを展開するうえで重要な要素になっています。
昨今の人手不足の状況下で、D社は事業計画に合わせて優秀な人材の採用および社員の教育にも注力する方針です。
D社にとっての事業展開上のリスクは、今後、自社の支店・営業所の拡大の速度に、協力個人事業主の確保・育成や、加盟物流業者との緊密な連携とサービス水準を把握・向上を管理できる内部人材が不足した場合に、このビジネスモデルが機能しなくなることです。
このため、D社は優秀な人材の採用および社員の教育を重視して、内部人材の確保・育成の速度に合わせた事業展開を優先することで、外部資源を活用した効率的なビジネスモデルを維持することを図ります。
以上です。
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