えぐちです。今日も事例Ⅱについて書きたいと思います。
事例Ⅱでは毎年3~4問の助言問題が出題されています。解答構成は「誰に、何を、どのように、その効果」として指導している受験機関が多いと思います。
昨年の第4問では、「X市と連携して夜の活気を取り込むための施策」を書かせる助言問題が出題されていますが、この問題は高得点答案でもほぼ解答要素に共通点がない難問でした。
与件文1段落目に、「裏手には大型バス1台、乗用車6台分の駐車場がある」という記述があったことから、「X市の経営者層と提携して大都市から大型バスを呼び込む」といった解答を作成する人がいました。この解答は加点されると思いますか?
この解答の妥当性を評価する際に重要なことは、「B社が活用できる経営資源」の概念です。
より具体的には、
①そもそも活用が期待されている経営資源なのか
②B社がコントロールできる経営資源なのか
の2点を重視します。この2点に基づき、「X市の経営者層と提携して大都市から大型バスを呼び込む」解答の妥当性を評価してみましょう。
①そもそも活用が期待されている経営資源なのか
「X市の経営者」や「裏手の大型バス」は、第4問での活用が期待されていたとは判断できません。X市は彼らの努力もあり、夜間の滞在人口が増加するなどの成果を上げています。昼間も和の風情を求めるインバウンド客が急増しており、X市は十分に盛り上がっており、わざわざ乗り遅れているB社を支援する理由はありません。
B社はたしかにX市中心部の「唯一」の宿泊施設ですが、上述のように、X市は昼も夜も来街客の増加に成功しており、これ以上の来街者増加を課題としていません。与件には「B社周辺にある他の業種の店々は、拡大する観光需要をバネに、このところ高収益を上げていると聞く。B社だけがこの需要を享受できていない状態だ」とあり、B社の宿泊施設に頼らずとも、X市の店舗はしっかりと「高」収益を獲得できています。
こうなると、B社の裏手の「大型バス駐車場」の意義が薄まります。仮にX市が従来の事例Ⅱの与件設計通り「来街者増加」を課題としているのなら、B社のこの資源は活用資源となるかもしれません。しかし、その課題がない場合、この資源を活用したいと考えているのは「B社だけ」になり、外部企業が連携する誘因が不足します。
②B社が自由に活用できる経営資源なのか
上記①にも関係しますが、経営資源は「自社が自由に活用できる」ことが前提です。仮にこの制約がなければ、「美術館と提携」「夜通し続く祭りと提携」と、なんでもありになります。そもそも「連携」と「提携」は意味が違いますので、出題の趣旨にある「X市と連携」という条件からも外れます(B社の過去の問題は、提携・連携・協業の問題が出題されており、それぞれ出題者の意図は異なります)。
このため、外部資源となる「経営者層」はB社自ら自由に活用できる資源とは言えず、本問での使用が期待されていたとは言えません。
上記の評価により、「X市の経営者層と提携して大都市から大型バスを呼び込む」という解答は出題者の期待からは外れていると考えます。
この解説を読んだ方には、「好き勝手な持論を展開するんじゃない」と感じる方もいらっしゃると思います。
えぐちがなぜ「資源制約」を重視するのかを理解していただくためには、やはり「過去問」を使用することが最も説得力があると思います。まず、次の解釈に異論があるかを考えてみてください。
「平成28年度の与件根拠にあった、「B社に30年来惚れ込んでいる有名鶏料理専門店」は、B社が有効に活用できる経営資源である。」
これをNOと答えたあなたは、事例Ⅱで安定的にA評価を獲得することは難しいと思います。
EBAでは平成28年第4問(設問1)のブランド戦略において、上記の資源を活用する解答を作成しています。それは、この資源はこの設問にしか活かせない資源だからです。
EBAの解釈が納得できないというあなたは、平成14年の事例Ⅱ第3問(設問3)を見てください。
「有名になったMシェフをB社の有効な経営資源の一つと考えたときに、どのように活用することが可能であるかについて100字以内で述べよ。」
ここで重要なことは、「有名なMシェフ」が、①有効に活用できる経営資源であること、②B社が自由に活用できる経営資源であることです。
試験委員は「資源制約」の非常に敏感です。これを理解したい方は、古い過去問を解いてみてください。今日は「資源制約」を理解するのに有益な過去問を紹介します。
平成14年第3問(設問3)
平成18年第3問と第4問(出題の趣旨も確認してください)
平成20年第5問(出題の趣旨も確認してください)
事例Ⅱが現在の与件・設問設計になったのは平成23年以降です。また平成29年試験以降、設問・与件設計がさらに変化しました。現在の事例Ⅱの仕組みは、昔と比べてかなり複雑になっています。その仕組みをシンプルに理解するためには、古い過去問がとても参考になります。「中小企業」診断士の2次試験を理解するための一助になりますから、ぜひ一度みてください。