えぐちです。
今日はEBAのオンライン100字訓練サービスについて書きたいと思います。
EBAではDMMオンラインサロンで100字訓練サービスを開始しました。
https://lounge.dmm.com/detail/2032/
毎日2次試験のA社からD社についてのお題(設問)を出題し、それに回答してもらいます。字数制約は50~100字で毎回異なります。
2次筆記試験における各設問の字数制約は短いものでは15字(平成13年事例Ⅰ第4問)から、長いもので200字(平成23年事例Ⅱ第5問)まであります。
ここ数年では、事例ごとに最も多い字数制約は、
事例Ⅰ 100字
事例Ⅱ 100字
事例Ⅲ 120字
事例Ⅳ 60字
となっています。事例Ⅲは相対的に字数制約が多く、事例Ⅳでは少ないですね。この理由には、解答構成で引用する与件文の量が関係します。事例Ⅲでは比較的多めに与件文を引用しますが、事例Ⅳではそれが少ないため、想定的に字数制約も少なくなります。
100字訓練とは、事例問題の平均的な制約字数を100字と想定して、設問から想定できる1次理論や出題者の意図を想定したうえで、「与件文を使用しないで」編集するための訓練です。100字訓練の特徴は、「与件文を使用しない」という点にあります。
2次筆記試験は事例問題なので、当然ですが、解答作成には事例企業の状況を把握する必要があります。しかし、事例企業の状況を把握しただけで、出題者の期待する字数制約で解答を作成することはできません。
2次筆記試験は中小企業診断士としての応用能力を問う試験なので、1次試験の学習を通じて得た経営理論の応用が求められます。ここでの「応用」は、1次理論をインプットしていることが前提となっています。
具体的に見ていきましょう。以下の設問から、必要な1次理論を想定してみてください。
平成30年 事例Ⅰ
第1問(配点20点)
研究開発型企業であるA社が、相対的に規模の小さな市場をターゲットとしているのはなぜか。その理由を、競争戦略の視点から100字以内で答えよ。
第4問(配点20点)
A社が、社員のチャレンジ精神や独創性を維持していくために、金銭的・物理的インセンティブの提供以外に、どのようなことに取り組むべきか。中小企業診断士として、100字以内で助言せよ。
平成29年 事例Ⅱ
第3問(配点30点)
地域内の中小建築業と連携しながら、シルバー世代の顧客生涯価値を高めるための施策について、120字以内で助言せよ。
平成28年 事例Ⅱ
第4問(配点30点)
昨今の多くの中小しょうゆメーカーでは、インターネット販売を展開している。B社もまた、新規事業として直接、最終消費者に対するインターネット販売に乗り出したいと考えている。
(設問1)
インターネット販売を軌道に乗せるためにB社が採るべきブランド戦略を50字以内で提案せよ。
平成23年 事例Ⅲ
第3問(配点20点)
C社の生産計画は計画期間中に変更されることが多い。C社社長は、当社製品の納期に対する顧客の満足度を上げるためにも生産計画の精度を向上させたいと考えているが、そのための対応策を200字以内で具体的に述べよ。
第4問(配点20点)
「フリーデザインシリーズ」事業に対応するため、CAD/CAMの導入を考えているが、このCAD/CAM化はC社にどのようなメリットをもたらすのか140字以内で述べよ。
事例Ⅳ
平成26年 第4問(配点16点)
D社では、再度、コーヒー豆を直接買い付ける可能性を探ることにした。しかし、以前のような為替差損を計上する恐れがあるため、この為替リスクを軽減する手段の検討に入った。為替リスクを軽減する手段を2つ挙げ(a)、それぞれの手段を用いた際、円安になった場合と、円高になった場合の影響(メリット・デメリット)(b)について述べよ。
平成22年 第4問(配点15点)
D社では、かねてから、将来的にも部品Qの受注が増加すると予想していた。そこで数年前より部品Qの増産に向けて新工場の建設プロジェクトを立ち上げ、社内で検討してきた。D社の製品は品質の面で他社より優位な立場にある。そこで新工場では、さらなる価格競争にも対応できる生産設備を導入することにしている。Z社からの受注増を受け入れるのであれば、このプロジェクトが実施される公算が大きい。平成25年度末の工場建設開始に向けて、余剰資金の一部を国債で運用することを計画している。新工場建設に伴う投資規模は約%億円と推定されている。先頃すでに5年後満期の利付国債を3.6億円購入した。手元資金のうち”億円についても同様に利付国債での運用を検討している。
(設問1)
金利が上昇した場合に保有債券の市場価値にどのような影響が出るかを20字以内で説明せよ。
少し古いものもありますが、すべて実際の本試験で出題された問題です。これらの設問に解答するためには、1次試験で学んだ経営理論がアウトプットできる能力が必要となります。これが「中小企業診断士の応用能力」です。
具体的に、2次筆記試験の解答を作成するプロセスは次のようになります。
上記のように、出題者が意図した解答を作成するためには、1次理論が必要不可欠となります。ここで問題になるのが、1次試験と2次試験のキャズムです。
1次試験は選択式の試験ですから、「記述されている文脈から最も適切・不適切なものを判断できる能力」が求められます。
例えば、以下の選択肢が適切か不適切かを判断してください。
オ 同業種のM&Aには、基本的には、範囲の経済と習熟効果の実現というメリットがあり、組織文化の調整のコストは必要であるが、統合のコストはかからない。
これは平成29年の企業経営理論第4問の問題です。正解は「不適切」となります。判断できましたか?
この選択肢を判断する際は、次のような思考で処理したと思います。
①同業種のM&Aには範囲の経済と習熟効果の実現というメリットがあり
→同業種のM&Aなら範囲の経済ではなく規模の経済だろう
→習熟効果は時間をかけて手に入れる効果であり、短期間で成果を求めるM&Aの目的ではないだろう
②組織文化の調整のコストは必要であるが、統合のコストはかからない
→同業種・異業種を問わず組織文化の調整や統合コストはかかるだろう
上記の選択肢は「ゼロから知識を想定する」のではなく、「すでに記述されている文章から判断する」ことで処理することができます。
次に、以下の設問に答えてください。
第2問(配点30点)
転廃業を迫られている地方の二次問屋に対してA社が積極的に進めている友好的買収に関連して、以下の設問に答えよ。
(設問1)
A社は、友好的買収を積極的に推し進めているが、その目的と効果について100字以内で説明せよ。
(設問2)
A社は友好的買収を進める際に、従来の従業員を継続して雇用することにしている。そのメリットとデメリットについて100字以内で説明せよ。
第2問(配点20点)
金融機関の後押しがあったにもかかわらず、当初、A社社長は、F社を傘下に収めることに対して、積極的、前向きではなかった。その理由として、どのようなことが考えられるか。F社が直面していた財務上の問題以外で考えられる点について、100字以内で述べよ。
上記はそれぞれ、平成22年と平成21年の事例Ⅰの問題です。これらの設問に回答するためには、1次試験で学んだM&Aの知識が必要となります。そして、ここで求められる1次知識のレベルは、「選ぶ・判断する」レベルではなく「想定する・判断する」レベルです。この「選ぶ」と「想定する」の違いが、1次試験と2次筆記試験のキャズムです。
具体的には、上記の設問に回答するためには、以下の知識を「想定する」必要があります。
①(同業種の)買収は、規模の経済を追求でき、短期間での事業展開を可能にする
②買収は(戦略的提携と比べると)不必要機能まで取り込んでしまうため、買収後の不採算部門・不必要部門の統廃合が必要になる
③買収は組織文化の融合が課題となり、人事面、労務面の雇用条件の違いがモチベーションの低下要因となる。
上記の理論想定ができないと、
①なぜA社は友好的買収を行ったのか
②なぜA社長は買収に躊躇していたのか
③従来の従業員を継続して雇用とどのようなメリット/デメリットがあるのか
という要求に応えることができません。1次試験問題が解けることと、2次筆記試験問題が解けることは、質的に求められる能力が異なるものであることが理解できたと思います。
EBAの100字訓練サービスは、このキャズムを埋めるための訓練を行います。
具体的には、今年の2次筆記試験で問われる可能性の高い理論を優先して、毎日設問を1問配信し、10分程度で解答作成してもらいます。
そして、翌日にその設問の解答例とポイントを配信します。
この「1問1答」を毎日取り組みます。それによる主な成果は以下の通りです。
①1次理論の応用を具体的に理解できる
②設問条件に沿った解答構成が身につく
③毎日「書く」ことで編集能力が鍛えられる
④上記①~③により、「出題者の意図を外さない解答が書ける」自信が身につく
特に本試験では④が重要になります。
毎年2次試験は、これまでの試験とは異なるようにみえる与件・設問設計を採用してくるため、動揺して普段通りの実力が発揮できなくなる受験生がたくさんいます。
しかし、この試験の本質は昔から変わっておらず、合格答案を作成するために必要な理論の応用も変わりません。100字訓練で毎日鍛えた「書ける力」は、変化に惑わされずに平常心を保って事例問題を処理するための自信を与えてくれます。
2次筆記試験では知識も必要ですが、精神面の強さは結果に大きく影響します。演習ではそこそこうまくいくけど本番では実力が発揮できないといった方は、ぜひ100字訓練を試してみてください。もちろん、1次理論の応用に自信がない方にもおすすめです。
さいごに、実際のEBAスクールの100字訓練のお題と解答例を紹介します。
設問
事業部制組織を採用しているA社の問題点と対応策について、60字以内で述べよ。
【解答ポイント】
問題点
①経営資源が分散する
②組織ごとの技術革新が進めにくくなる
③組織的な対応が困難になる など
対応策
④人材の流動性を確保することで対応する
実際の問題では、上記①~③の逆機能の1つ、もしくは2つが対応します。
例えば平成28年の事例Ⅰでは、上記のうち①と③が対応していました。
このように、100字訓練では設問から想定すべき理論を正しくインプット/アウトプットできる能力を毎日鍛えます。
本サービスは9月17日から開始していますが、2019年の2次試験対策上、特に優先順位の高いテーマを出題してまいります。
この時期になると、各受験校も演習問題が終了します。毎日新しいお題に答える習慣を維持する目的でも活用できますので、ぜひお試しください。