【2次】今年のA社を考える

えぐちです。

今日は少し視点を変えまして、今年の事例企業のストーリーを書いてみます。

今日は事例Ⅰについて書きます。

研究開発型の中小企業であるA社は、中小企業にとって大きな負担になる研究開発投資負担を外部資源に頼らず、なんと自社資源だけで取り組んできました。

それを可能にした理由は、開発資源を集中させて研究開発投資効率を高めるためにニッチ市場を選択したからです。   

これにより、A社は多様で幅広い製品開発を実現しています。

また価値連鎖でみたA社は、メーカーであるなら保有すべき主要活動(購買・オペレーション・出荷・マーケティング・サービス)を一切もたず、支援活動である技術開発に特化しています。

なぜこのような資源配分が可能だったかというと、A社はメーカーでありながらも生産も販売も外部委託したうえで、最終消費者市場以外を事業ドメインとしたからです。

これによりA社は、自社が付加価値を生み出しにくい機能に資源が分散することを回避しました。

そんなA社にとっての大きな転機となったのは、これまでの発想を大きく変えることになった、複写機関連事業の事業機会を得たことです。

この市場はこれまでの売切り型のビジネスモデルとは異なり、販売することに成功できれば、消耗品などの関連需要を継続的に獲得できます。

しかし、これまでと異なる市場で、後発であるA社がどうして競争優位を構築することができたのでしょうか。

その機会となったのが、情報技術の急速な進歩でした。

A社は研究開発型企業で、技術的な専門性を強みとしています。

そんなA社にとって、情報技術の急速な進歩は願ってもない変化でした。

A社長は戦略を転換すると同時に、技術専門性を発揮しやすい組織に改編することで、急速な技術進歩に対応しようとしました。

A社長の狙い通り、A社は後発参入した複写機関連事業での製品販売に成功し、消耗品・部品などの継続需要の獲得にも成功しました。

その後リーマン・ショックにより、多くの同業者が撤退を余儀なくされる中でも、A社は市場シェアを高めています。

しかし、この市場も将来性はないと判断したA社は、リーマン・ショック後しばらくして、複写機関連事業以外の事業の柱を持つ必要性を感じ、先進分野の製品開発・事業開発に戦略を転換しました。

そして、これに合わせてこれまでの複写機関連事業に最適化していた技術専門組織を製品開発・事業開発重視の組織に改編しました。

新しい組織では、製品開発部門を中軸として、部門内に製品開発グループや事業開発グループを設置したうえで、チーム組織を編成しました。

A社がチーム組織を選択した理由は、多様な技術部門の専門家を集めることで、新しいアイデアの開発や問題解決を推進しようとしたからです。

しかし、組織改編してから10年近く経過しても、A社の売上の6割は複写機関連事業のままです。この組織は、A社長の狙い通りには機能していないようです。

組織構造はコンピューターで例えればハードウェアであり、組織の箱です。

A社は戦略を変え、組織構造を変えましたが、この箱に最適なソフトウェアをインストールしなかったため、期待する成果が得られませんでした。

その原因は、実力主義を徹底した組織文化にありました。

A社は成果主義を多く取り入れた賃金体系をもつため、個人主義・短期志向が文化として根付いており、チームが機能しなかったのです。

そこでA社は、グループに権限を与えて自由裁量の余地をもたせたうえで、チームによる評価制度を取り入れました。

これにより、実力主義が生み出したA社のチャレンジ精神や独創性を維持しつつも、家族主義的な要素をも取り入れ、組織的連帯感を醸成することで、チームを機能させることが可能になります。

さらにA社は、これまでの技術特化の考え方が、新たな着想を生み出すことを遅らせていると考えて、中途採用のみであった採用方針に新卒採用も取り入れることで組織を活性化し、先細りしたA社の複写機関連事業の代わりとなる、時流を先読みした先進的な事業展開を目指そうとしています。

以上が今年のA社です。

なお、内容はえぐちの想像が多分に含まれています。

今年のA社をざっくり振り返ると、

これまで①→研究開発投資効率をあげる市場選択や研究開発特化型の資源配分で技術成果を得て製品開発を実現

これまで②→継続取引を可能とする技術変化を機会としたドメインシフトで競争優位を構築

これまで③→先細りする複写機関連事業の代替となる事業を確立すべく組織再編するも、思うように機能せず

今後→内発的動機づけ、チーム評価を取り入れて既存の組織文化を維持しつつも組織を活性化

といった感じです。

みなさんも、上記物語を想定した上でもう一度事例問題を読んでみてください。

たくさん気づきがあると思います。

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