えぐちです。
最後は事例Ⅳについて、A評価者とB評価者の違いを考察していきます。
<分析データについての説明>
・再現答案の協会評価83名のデータを使用しています
・データには合格者は含まれていません
・平均点はEBA採点基準に基づく採点です
<事例Ⅳ>
上の表は、協会評価ごとのEBA採点基準に基づく平均点との関係です。
表から負の相関関係が読み取れます。
下の表は、事例ⅣのA評価者とB評価者の平均点を比較したものです。
第1問(経営分析)
合格者と不合格者では得点差がありますが、A評価/B評価ではB評価者の方が高得点となっています。
これは、経営分析の得点能力の差というより、時間配分の差であると考えられます。
経営分析ではある程度の時間をかければ(EBAでは22分と指導しています)十分な得点が得られ、必要以上に時間をかけても追加的な得点はそれほど期待できないため、経営分析以外の問題に時間を割くことが有効です。
A評価者は時間管理が優れているため、経営分析では十分な得点を得つつ、全体での高得点獲得にも成功しています。
第2問(CVP分析)
合格者/不合格者では得点差があり、A評価者/B評価者ではそれほど差がついていません。
今年度の損益分岐点分析は難易度が低いため、多くの受験生が得点できたと考えられます。
設問2では設問1の計算結果を使用して処理するという制約を無視した解答でA評価/B評価の差の原因となっていると考えられます。
第3問(設備投資の経済性計算)
例年難易度の高い問題となる領域ですが、今年度では十分に得点可能な難易度となっています。
難問の設問3では得点差は少なく、キャッシュフローの計算である設問1、回収期間法や正味現在価値法の計算である設問2で大きな得点差があります。
特に設問1の計算ミス(利益が負の場合の節税効果計算)は与件情報の読み落としが原因であり、これは第2問設問2と同様の原因と言えます。
設問3のような計算ミスのリスクが高い問題より、リスクの低い問題で得点差が出ている事実は今後の対策上、非常に重要になります。
第4問(知識問題)
特別難しくない知識問題でしたが、合格者/不合格者では得点差がありました。
本問自体が難しい問題ではないことから、時間管理面の差が得点差の原因であると考えられます。
まとめ
分析結果から、A評価者とB評価者の差は、「取るべき問題への対応力と時間配分」であるといえます。
合格者のなかには難易度が高い問題への対応力が高い方もいますが、それは少数です。
また、不合格者の方の答案でも、難易度の高い問題で対応できている方も散見されますが、総得点が高位に安定しているわけではありません。
設問解釈時点での適切な難易度の評価と優先順位付け、そしてそれに基づく時間管理の能力が合否を分けたと言えます。
難しい問題でも対応できる実力を身に付けようとする意気込みは勇ましいことですが、本試験でその力が発揮できなければ、それは匹夫の勇となります。
これまでのデータから、難しい問題への対応は合否に影響していないことが明らかです。
客観的な事実から対策を講じることが重要であると考えます。
①適切な難易度の評価ができる、②難易度評価に基づく優先順位付けができる、③決めた通りの管理ができる能力が、本試験での合否を決めます。
これらの力は、「客観的に自身を観察」できていることが条件となります。
本試験の現場ではプレイヤーとしての自分ではなく、管理者としての自分を常に知覚できていることが重要です。
この能力は日々意識し続けることを通じて身に付ける性質の能力です。
暗黙知に近い性質の能力ですが、定量化して鍛えることは可能です。
たとえば設問解釈時点で難易度をABCDで評価し、優先順位を12345で決め、その後の処理は時間を定量的に把握して演習後に数値結果で振り返ることが有効です。
「自分のデータを知る」ことは、改善や進歩を知覚するために役立ちますので、ぜひ意識して取り組んでください。
※EBA再現答案サービスを利用された方で、協会得点開示請求をした方がいましたら、開示得点の共有にご協力ください。よろしくお願い致します。
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