第2回は債権者保護手続について書きます。
今回の㈱ペッパーフードサービスによる会社分割は以下の内容となっています。
⑴㈱ペッパーフードサービが保有するペッパーランチ事業を㈱JP社に承継させる
⑵新設分割計画承認日(取締役会):2020年4月30日
⑶分割期日 :2020年6月 1日
⑷株主総会特別決議:簡易組織分割を採用するため不要
※会社法第805条 新設分割により新設分割設立会社に承継させる資産の帳簿価額の合計額が新設分割株式会社の総資産額の5分の1を超えない場合には、株主総会による承認は不要となる
⑸分割会社:㈱ペッパーフードサービス
⑹承継会社:㈱JP(新設)
⑺対価の支払い方法:新設会社が発行する株式1,000株(資本金1,000万円)により支払う
(これにより㈱JPは㈱ペッパーフードサービスの完全子会社になります)
⑻債権者保護手続き:新設会社に分割される負債は、すべて分割会社である㈱ペッパーフードサービスが連帯債務者となる(重畳的債務引受といいます)
会社分割が事業譲渡と大きく異なる点は、事業の分割に伴い事業資産だけでなく事業負債も分割することです。
会社分割により、債務は債権者の同意なくして免責的に承継会社または新設会社に移転します。
今回のケースでは、ペッパーランチ事業に伴う事業負債4億円が㈱JPに移転することになります。
これにより、㈱ペッパーフードサービスの債権者のうち、ペッパーランチ事業に関する人たちは、債権を請求する相手が㈱ペッパーフードサービスから㈱JPに移転することになります。
このような分割は、債権者に損害を与える恐れがありますので、会社法では、分割会社の債権者のうち、ペッパーランチ事業にかかる者に対して、意義を申し立てる機会を設けています。
分割会社は、債権者が異議申し立てをした場合には、債務の弁済や担保提供等の義務が課せられています。
今回のケースでは、移転する4億円の負債全額について、分割会社である㈱ペッパーフードサービスが連帯債務者として負債の支払い義務を負うことにより、債権者保護を図りました。
これにより、移転した4億円の債権者は、㈱JPに対しても、㈱ペッパーフードサービスに対しても、債務の履行請求ができるようになったわけです。
以上が債権者保護手続の概要です。
今回の㈱ペッパーフードサービスの会社分割では、分割事業であるペッパーランチ事業の債権者は保護されましたが、簡易会社分割による手続きであることから、①株主による異議を申し立てる機会がなく、②㈱ペッパーフードサービスの残存債権者は意義を申し立てることができない、という問題が残ります。
㈱ペッパーフードサービスの総資産は234億円、純資産は6億円ですから、自己資本比率は2.5%になります。
本日(7月3日)、㈱ペッパーフードサービスは㈱JP株を85億円で売却すると発表しました。
この譲渡により、同社は主力事業だったペッパーランチ事業を失うことになります。
この事業譲渡(株式譲渡)が同社の株主や債権者に与える影響について、第3回で書きたいと思います。