下のグラフは令和4年度2次筆記試験事例Ⅳの得点開示結果に基づく得点分布です。グラフはEBA再現答案採点サービスに協力してくださった512名のうち、得点開示結果を共有してくださった256名のデータを元に作成しています。なお、縦軸の得点はEBAの採点基準による素点で実際の得点とは異なります。
グラフから素点(縦軸)40点で60点を超えていることが確認できると思います。このことは令和4年11月に説明しています。詳しくはYoutube動画をご覧ください(19:46から素点と評価の説明をしています)。
令和4年度の設問構成は以下のとおりでした。
また、再現答案採点サービスで収集した再現答案とEBA採点に基づく得点推移は以下のとおりです。
得点分布から、以下の説明ができると思います。
⑴第1問(経営分析)では差がつかないが、D評価者は経営分析でも得点が低い
A評価からC評価までは経営分析の得点はほぼ差がありません。このため、経営分析は「差がつきにくい問題」であると言えます。一方、D評価者は経営分析でも得点が低いことがわかります。
⑵第2問(セールスミックス)の得点が評価(A~D)の分岐点になっている
60〜69点と50〜59点を比べると、第2問で差がついていることがわかります。第3問でも多少は差がありますが、第2問と比べるとほぼ差がないと言えます。このため、令和4年度事例ⅣでA評価を取るためには、第1問、第2問、第4問で得点できればよいということが言えます。
⑶第3問(設備投資の経済性計算)での得点が70点以上得点するための条件になっている
さらに高得点者のデータに目を向けると、70点以上得点された方は第3問で得点を積み上げていることがわかります。令和4年度の事例Ⅳで70点を超えるためには、第3問(設問1)で得点する必要がありました。
⑷第4問(リスクマネジメント)は評価別に明確な得点差がある
総得点と第4問の得点がほぼ比例関係であることが確認できると思います。知識問題は高評価を得るための基本であることがわかります。
つぎに、計算問題の正答率を見ていきましょう。
下表は令和4年度の事例Ⅳの計算問題の正答率です。データはEBAの再現答案採点サービスに協力してくださった512名分の答案を元に作成しています。
上記のグラフの分布を裏付けるデータになっていることが確認できます。
第2問のセールスミックスは計算自体平易であり、平成26年度の問題(第3問)と比べてもかなり難易度が低いため、容易に得点できる問題でした。正答率も設問1で約7割、設問2でも2〜3割となっています。つまり、事例ⅣでA評価を取るためのハードルはそれほど高くなかったと言えます。
中小企業診断士試験でNPVが難しい理由
第3問(設問1)の正答率は2割弱であり、難しい問題と言えます。しかし、この問題が解けなくても6割は確保可能でした。
一方で、第3問(設問2)以降は一桁となっており、得点することは困難な難易度であったことがわかります。ほかの事例問題と同様、80点は狙って取れるものではないと言えます。
そこで、NPV問題の正答率が低い原因を考察してみます。
第2問と第3問の文字数を比べてみてください。
第3問の1設問あたりの文字数は、第2問の約2倍もあることがわかります。文字数(情報量)が多ければ、それだけ変数を整理するのに時間がかかり、誤った数値を使用してしまう可能性も高まります。事例Ⅳは1日試験を受けて疲労コンパイルな16時以降に解く科目です。集中力も相当低下しており、単純なケアレスミスも起きやすい状態にあると言えます。
このような状況であることも、NPVの正答率が低い大きな要因であると言えます。
2次試験まで2ヶ月を切りましたが、多くの方は難しいNPVの問題を繰り返し解いていることと思います。過去問は繰り返せば解けるようになりますが、本試験で出題される新作問題は、計算能力よりも情報処理能力が要求されます。これは、中小企業診断士の2次試験を単なる計算試験にしたくないという作問者の意向を反映していると考えています。
もちろんNPVの問題でも令和元年度第3問(設問3を除く)のような平易な問題も出題されます。この年度の問題は文字数が極端に少ないため情報処理負荷が少ないことが、難易度が低かった一因です。 これらの情報を持ち合わせて試験に臨めば、その年の難易度の影響を受けずに確実にA評価を取れると思います。