えぐちです。
今日は先日出した１００字訓練のお題の解答例をご紹介します。
先日のブログはこちら。
【お題】
A社が組織能力を高めることができた理由として、どのようなものが考えられるか。60字以内で述べよ。
【解答例】
取引先のニーズに応える過程で改良や変革を重ねてきたこと。外部企業からの刺激を通じて新しい知識を獲得できたこと。
組織能力はケイパビリティのことで、試験委員の小川正博先生がご自身の著書で「企業が保有する経営資源の１つ」と明記されています。
ケイパビリティという用語は１次用語で、企業経営理論で頻繁に出題されています（以下参照）。
【参照問題】※選択肢の文末尾の（）内は解説です。
平成30年 企業経営理論
第３問 企業の経営資源に基づく競争優位を考察する VRIOフレームワークにおける模倣困難性は、持続的競争優位を獲得するために必要な条件とされている。この模倣困難性に関する記述として、最も適切なものはどれか。
×ア Ａ社が、模倣対象のＢ社が保有する経営資源やケイパビリティと、Ｂ社の競争優位の関係を理解しているか否かは、Ａ社がＢ社の模倣を行う時のコストに影響を与える要因にならない。（これは模倣困難性の説明ではなく、因果不明性の説明）
平成28年 企業経営理論
第８問 競争優位の源泉を分析するには、バリュー・チェーン（価値連鎖）という概念が有効である。バリュー・チェーンに関する記述として、最も適切なものはどれか。
○ウ バリュー・チェーンの各々の価値活動とともに、それらの結び付き方は、企業の独特な経営資源やケイパビリティとして認識することができる。（バリューチェーンの諸活動の１つひとつ、またそのうちのいくつかが互いにどのように連携しているかは、企業の経営資源やケイパビリティととらえることができる）
２次試験でも、試験委員が直接「組織能力」という経営資源に言及したことがあります。
以下、平成23年度試験の出題の趣旨です。
平成23年度 事例Ⅰ
第4問
【出題の趣旨】一定の成長を確保しているA社が継続的に成長していく組織能力を維持・強化していくための組織管理上の施策について、助言能力を問う問題である。
じつは診断士を学習している方でも「ケイパビリティ」を正しく説明できる人は多くないのですが、2次試験（事例Ⅰ）を解く際に、この知識が欠けていると事例Ⅰは非常に難しい問題に感じてしまいます。
小川先生が明記されている通り、ケイパビリティは経営資源ですので、A社の経営資源を知らずに事例問題を理解することは困難です。
事例ⅠではA社の成長要因や、今後の戦略を策定する際に資源ベースで検討させることが多いため、この見えざる資産である重要な経営資源に気づけないと、「なぜ成長できたのか」「今後どうすればよいのか」が想定できなくなります。
今回のお題では、A社の組織能力育成要因を理論展開して60字で編集してもらうことが目的でした。
組織能力の構築は３つありますが、このうち事例問題として想定しやすい２つを挙げています。
この理論展開ができると、与件解釈において、探しにいく根拠が具体化されます。
今回の例だと、「組織能力」として想定するのか、それとも「取引先との関係」「外部企業との関係」を想定するかで、与件文の気づきやすさが異なります。
出題者は、このような理論展開を期待した上で、与件文に具体的な根拠を埋め込んでいます。
そしてこの具体的根拠を特定することで、出題者が意図した根拠を使用した解答が作成しやすくなります。
与件根拠は複数個所に埋め込まれていますので、理論展開した内容に対応した与件根拠を選択して、40字～50字程度引用して上記の60字を繋げて100字の解答を編集します。
この一連のプロセスにおいて、「1次理論」が中心的な役割を演じています。
中小企業診断士の2次試験では1次試験で学んだ理論を事例問題において応用する能力が求められますが、この理論を応用するための重要なヒントは設問に示されています。
１００字訓練は、この応用能力を毎日鍛えることで、８０分という制約の中で７０点答案を作成するための力が発揮できるようになるための訓練です。
EBAの受講生の３割は通信生ですが、「１００字訓練」という課題に毎日取り組んでもらうことで、２次の学習で不足している理論や自分の弱点に気づくきっかけを持つことができます。
通信生の受講生にとっては毎日の課題が明確になるため、学習ペースの維持や学習意欲の向上にも役立ちます。
みなさんも、ぜひ毎日１００字訓練に取り組んでください。
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