EBA中小企業診断士スクール 統括講師の江口明宏です。
今回も、前回の事例Ⅲを使った生産管理理論について、解答を発表したいと思います。
問題
平成24年度事例Ⅲ 第5・6段落
製品の生産工程は、購入した部分肉の受け入れ検査、一次加工(整形)、スライス、トレー盛り付け、包装、製品検査である。納品は、各顧客からの注文によって週2回それぞれの顧客の配送センターへ配送することが原則となっている。生産計画は毎月20日までに翌月の計画が作成されるが、その時点では顧客からの注文内容は確定しておらず、各営業担当が各顧客への販売数量を予測し、製造部では製品在庫との調整を図って見込み生産を行っている。製造原価構成では原材料費と人件費の割合が大きい。コスト削減対策の1つとして、スライス工程では汎用機を使用すると熟練工を必要とすることから、高い加工技術を必要としない専用機化を進めて人件費の抑制などを行ってきたが、既存の顧客からは一層の製品単価引き下げ要請がある。
牛肉および豚肉は同じ設備で加工されている。そのため肉種の変更時および部位の変更時などの製品品種切り替え時には、衛生管理を徹底するため各設備機器の洗浄、消毒を行うことになっており、その作業には約1時間を要する。また毎日の作業終了時には作業スペースの清掃のほか、各設備機器は分解して洗浄、消毒することから、2時間程度の時間を必要とする。この清掃、洗浄、消毒の作業は、作業者によってその方法が異なり、所要時間もそれによって変動する。製品品種切り替え時の洗浄などの時間が長いため、ロットサイズは生産性と段取り時間を考慮して製造部で決めている。最も販売数量が多い食品スーパー向けの製品S1と、多品種少量の典型的な外食チェーン向け製品D2の生産累計数と出荷累計数の直近1ヶ月の推移は、図2および図3にそれぞれ示すとおりである。現状は全製品ほぼ同じロットサイズを採用しており、製品によって在庫水準は異なり、欠品によって受注に対応できない場合も生じている。
解答
(設問2)C社の課題や対応策として最も適切なものはどれか。
×ア 内段取の外段取化による生産性改善が課題となる。
→設備の洗浄や消毒はラインを止めないとできないので、外段取り化は不可能である。
×イ 生産ラインを増設して牛肉と豚肉を分けることで生産性を改善する。
→肉腫だけでなく部位が異なっても段取り替えが必要であり、ラインを分けても解決でいな い。また全体の稼働率も考慮した場合、設備投資が生産性を低下させる可能性がある。
〇ウ 食品スーパー向け製品は小日程計画による修正で週ごとの生産量を調整する。
→正しい。毎月20日の生産計画作成時点では顧客からの注文内容は確定していない。C社は図2よりC社は週に1度生産しているため、小日程計画で生産量を調整することで欠品による機 会損失を解消できる。
×エ 外食チェーン向け製品の生産頻度を上げる。
→外食チェーン向け製品は出荷量が少なく変動も少ない。生産頻度を上げることで1回あたり の生産ロットが小さくなるため、段取り回数増加が生産性低下要因となる。